夏始

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夏始


夏始

夏始約束通り病みて待つ
校歌にもかつみは清し夏の候
夏蝶の落ちては迷う安積沼
蕉翁と安積野の風夏探し
夏初月かつみかつみとメイズ行

かわたれの泪の雫すぐりの実
すぐりの実紅の階掛け捨てて
浅き夏遊び疲れた妹と
たそがれの染屋の夏の忙しく
夏来てもこの家の軒は鬼ばかり

死ぬる前一度会いたし青大将
特老の庭にくちなわ迎えに来
結界を抜けて来たらし山の神
突然死水晶体に蛇の影
蝮みな一斉に発つ沢伝い

今はもう切られて消えた夏柳
新しい街路樹の名は夏椿
山法師昔ホテルがあったとこ
天道虫一匹連れて帰りたし
無名氏の読み掛けの詩と夏帽子

言葉なき金魚ひらりと平仮名に
子と猫と掻き混ぜており夏の水
土饅頭夏のひかりを三つ盛り
金魚草金魚去りゆくその傍に
夏の死を見詰めおさな少年に

苺より先に摘みしは蛇苺
父母の若くて可笑し蛇苺
虹立ってままごと遊び最後の日
現実の夏始まって迷い星
道化師の役ばかりくる夏の星

犬もいて猫もいた午後花うばら
花うばら穿って埋めし瀬戸の欠け
犬猫を喪い次に裏の庭
墨染めの巡り歩きて麦の秋
僧形の乞食の裾薔薇の棘

館山の麓に渡る田長鳥
城山の方からも飛ぶ閑古鳥
黒森の切通し抜け十一も
布引の熊笹揺らす老鶯も
ほうほうと考現われて青葉木菟

仏間から蔟はみ出で茶の間まで
手伝いの小母も肩脱ぎ上蔟す
繭掻きの祖母の胸元大波に
生繭や祖母の乳房を奪い合い
白繭や一寝の夢に鳴る蛹

古本屋帰りにラムネ買うとする
音を聞く為にソーダを開けている
幼年は内側にある硝子玉
一本の青い時計を飲むラムネ
ベランダは招きもしない蚜虫



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